魚鳥木

東京から沼津に移住して飲食店を始めるお話とか、趣味の話とか

カツ煮

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カツ煮というのはカツ丼の上に乗っかっている部分の事である。サックリとクリスピィに仕上がったポークカツレツをあろう事か煮汁に浸した上に溶き卵をぶっかけて気持ち程度にジャパニーズハーブの三つ葉を散らす。そこにはファビュラスな夢の味覚と食感の世界が広がる桃源郷のおかず、カツ煮。
以前から酒のアテには最高であろうとは思っていたのだが、パン粉の衣を付けて、揚げて、煮て、卵でとじる、という過程に面倒を感じてメニューに入れてなかったのだが、ふと気まぐれに、どうせ売れ残るから自分のオカズにしようと思いメニューに「とんかつ」と書いておいたのを白隠正宗蔵元高嶋氏がめざとく発見し、「これ、とじれます?」なんて一言から、カツ煮は当店のスペシャリテの座を獲得したのであった。
美味しんぼ4巻「食卓の広がり」で大金持ちなのに偏食家の真山氏に奥様がカツ丼を作るのだが、肉の厚さについて山岡が言及していて「肉の旨味と衣の旨味が調和するのは5ミリが限度」と言う。この作品は極論が多いがこの意見には私も同意する。カツ煮の肉は薄くて良い。生姜焼き用くらいがちょうど良いのではないだろうか。衣は出汁を吸って欲しいのでやや厚めにつける。出汁の味は人それぞれの好みになるが、甘すぎず辛すぎず適度なバランスを保ちたい。そして重要なのは出汁の量で、ここで大きく趣味がわかれる。汁に浸っているくらいが良いのか、カツと卵が汁を吸ってしまい汁気があまり無い方が良いのか。魚鳥木的には後者を選択している。肉じゃがも汁なし系なので、これは私の傾向であろう。ちなみにご飯に乗せる、つまりカツ丼の場合は気持ち汁気を多めにするようにしている。ご飯にも甘辛い汁を伝えてあげたい親心である。そして最後に投入する溶き卵も半熟程度で仕上げたい。
理想は完成した状態でも多少のクリスピィ感を残したいところだが、ここが一番加減の難しいところである。あまり早すぎると卵が生すぎるし、煮すぎるとクリスピィは失われてしまう。カツの周辺に流れ込んだ溶き卵の具合と対峙している時の自分は、パットメセニーの「Have you heard」のソロをとっている時と同じくらい真剣だ。綴りあってるかな?
そして最後に親子鍋から皿に移すまでがカツ煮である。ここで崩れてしまっては何もかもが台無しだ。盛り付けの失敗したカツ煮はもう三角コーナーの内容物にしか見えなくなってしまう。色々と繊細な食べ物なので、最後まで気を抜かずに行きたい。
そんな当店のスペシャリテ「カツ煮」。サッポロラガーa.k.a.赤星とのマリアージュを是非ご堪能下さい。国産生レモンサワーもオススメですぞ。

 

P.S. カツ煮のカッコいい略称を付けたいのだが、「K22」か「KT2」で悩んでます。